あなたは食事の前に「いただきます」を言いますか?
忘れがちですよね。
忙しかったり、ストレスが溜まっていたりすると言わなかったり、ただの食事スタートの合図になってしまいます。
そこで今日は仏教のお経をご紹介。
ちょっと心が疲れているとき、食事前に思い出してほしい言葉です。
食事の前に必ず唱えるお経
お坊さんは幾多のお経を唱えますが、食事の前に唱えるお経だけでも数多くあります。その中の一つに「五観の偈(ごかんのげ)」というお経があります。
禅宗では、生活の全てが修行という考えがあります。ですから、食事もその一つになります。その五観の偈では「この食事は、数多くの命で出来ている。数多くの人が汗水を流し目の前にある。その食事をいただくからには、いただくにふさわしい生活をしよう。」という意味合いの言葉を唱えています。
今私たちが「いただきます」と食前に言葉にしているその意味はこのお経に由来しているのだと思います。
五観の偈
五観の偈
一つには 功の多少を計り彼の来処を計る
二つには 己が徳行の全闕を忖って供に応ず
三つには 慎を防ぎ過貪等を離るるを宗とす
四つには 正に良薬を事とするは形枯を療ぜんがためなり
五つには 道業を成ぜんがために応に此の食を受くべし
亀岡市 宝泉寺 「禅宗経典」より
- この食事がどうしてできたかを考え、食事が調うまでの多くの人々の働きに感謝をいたします。
- 自分の行いが、この食を頂くに価するものであるかどうか反省します。
- 心を正しく保ち、あやまった行いを避けるために、貪など三つの過ちを持たないことを誓います。
- 食とは良薬なのであり、身体をやしない、正しい健康を得るために頂くのです。
- 今この食事を頂くのは、己の道を成し遂げるためです。
略訳(Wikipediaより引用)
感謝、反省
一つ目の文と二つ目の文はわかりやすく、感謝と反省。
いま目の前にあるこの食事がたどってきた道を考え感謝しよう。
草木や動物などの命、関わった全ての人にも感謝。
いただきますとセットの「ごちそうさま」という言葉があるが、「馳走(ちそう)」とは、走り回ることだそうです。食材をつくり、運び、料理をつくる。これらは走り回ること=働くこと。「ごちそうさま」はそこまで準備してくださった全てへの感謝の言葉です。
そして反省。反省というよりは、自分がこの食事をいただくに値するくらいに頑張っていこうという目標のような捉え方のほうが私的には健全です。
心が不安定のときは、食事なんて私にはおそれおおい…と、とんでもない思考が降ってきてしまうので、前向きにいきましょう。
貪ることなかれ
三つ目の文は三つの過ちについて。三つの過ちは「貪・瞋・癡(とん・じん・ち)」の「三毒」のことをいい、煩悩の中でも特に悪いものとされています。持っていると苦しむという三つですが、それぞれ
- 貪:むさぼり、貪欲、必要以上に求める心
- 瞋:瞋恚、いかり、憎しみ、妬みの心
- 癡:愚痴、無知、おろかな心
という意味があります。食事では三毒の中の筆頭である「貪」はとくにダメとされています。
私も時折思うことなのですが、食事が「腹に入れるだけのエサ」扱いになっているときは、たいてい心が病んでいます。食事は美味しくいただくことが一番の感謝なのかもしれません。
健康のためにいただきます
四つ目の文はまさに食事の本質。私たちの身体は食べたもので出来ているので、悪いものを食べれば身体には毒だし、いいものを食べれば健康になるという基本を唱えています。
現代では食が溢れています。世の中の食品ロスも大きな問題ですが、生活習慣病に結びつく一人ひとりの食の摂りすぎも問題です。「身体をやしない、正しい健康のために」何を、どのくらい、いただくかを考えることは今とても重要だと思います。
この食事を自分に活かしていく
多くの命を頂いたからには、活力にし、目の前の課題に精進する。そんな五つ目の文。お坊さんは悟りを開くために修行しますので、「この目標のために食事をありがたくいただきます。」という締めの文になります。「腹が減っては戦はできぬ」という言葉もあるので、目標に向かうには良い食事を摂った健康な心身があってこそ。
略して「いただきます」
「いただきます」。命に感謝する言葉を食事前に唱えるのは世界では日本だけという考えがあります。これは世界に誇れるとてもいい文化だと思います。「五観の偈」を知り、考えてみると「いただきます」はその言葉の省略形なのではないかと思います。
まとめ
五観の偈、いいお経ですね。
宗教語にしておくのがもったいない気がします。
食育や食品ロスなど、食事に関してもう少し考えないといけない今だから、なおさら心に響くんだと思います。
食事はあなたをつくります。
心にも身体にもいい食事をありがたく頂いて心身を整えて自分の生活を生きていきましょう。
「手を合わせてください、いただきます」
ではでは